ブランド・マネージャー認定協会 BRAND MANAGEMENT AWARD

FINALISTファイナリスト

富山県 富山から世界へ 地域を巻き込むブランド戦略

三郎丸蒸留所は、加熱するウイスキーブームに依存せず、長く愛されるブランドの確立を目指した。課題整理を経て「地域に拠って、世界に立つ」のブランドアイデンティティを策定。スモーキーな個性の明確化、地域資源を活かした商品・体験づくりに加え、業界の持続可能性を支える事業を実行した。独走ではなく、地域や業界と共創しながら発展していく姿勢を貫き、売上6倍・輸出8倍・35カ国展開という成果を実現した。

中山 真由美

中山 真由美 有限会社ファイン・プロジェクト 1級資格保持者

県内企業の依頼案件や自主的なデザイン活動を通じて、「未来に価値を伝えるデザイン」を探求する中、ブランド・マネージャー認定協会と出会い、2018年に資格を取得。2016年からアートディレクター/デザイナーとして参画した若鶴酒造との共創は、今年で9年目を迎える。地域に根ざしたブランディングデザインを推進。グッドデザイン賞や富山県デザイン展 富山県知事賞、富山ADCグランプリなど受賞多数。

平野 朋子

平野 朋子 合同会社Brand. Communication. Design. エキスパートトレーナー/シニアコンサルタント

LAでグラフィックデザイナーとしてキャリアを開始後、新規事業の立ち上げや事業再生、組織変革を促すインターナルブランディングの支援を行っている。見た目のデザインに入る前に、課題の整理や全体像の設計を重視し、ブランドを総合的にデザイン。経営やマーケティングの視点にデザインの力を掛け合わせ、ブランドの可能性を広げる伴走支援を行っている。受賞歴:BRAND MANAGEMENT AWARD最優秀賞受賞、他

上田 夏世

上田 夏世 若鶴酒造株式会社 3級資格保持者

若鶴酒造株式会社/三郎丸蒸留所で広報・海外事業を担当。三郎丸のブランド発信を国内外でリード。

当日の様子

富山から世界へ 地域を巻き込むブランド戦略

「富山から世界へ 地域を巻き込むブランド戦略」は、北陸最古のウイスキー蒸留所がスモーキーという独自性を核にブランドを確立した事例です。1862年創業の若鶴酒造の5代目社長は、55年前に蒸留されたウイスキーに衝撃を受け、北陸唯一の蒸留所を未来につなぐ“繋ぎ手”となることを決意。ただ、ブーム終焉後の需要減への懸念や、新規参入が急増したことによる差別化、ブランド認知度などの課題があり、社内でも社長が描くビジョンに現場がついてこれないなどの課題がありました。加えて、市場の急成長でジャパニーズウイスキー全体の価値が低下するという業界的な課題や、伝統工芸の衰退で町の魅力が薄れつつあるという地域の課題もありました。

そこで市場機会を検討し、「スモーキーという希少な個性と富山・三郎丸の地域性を融合させれば、国内外のプレミアム層に選ばれる唯一無二のブランドを確立できるのではないか」と仮説を構築。「社内浸透と一体感」「地域との共生」「長く愛されるブランドの確立」を目指しました。まずは社長と社員とともにブランド・アイデンティティを策定。プロセスを共に歩むことでトップと現場のギャップを埋めました。ブランド・アイデンティティは「地域に拠って、世界に立つ。」とし、ロゴマークも刷新。三郎丸ならではのパッケージも作成しました。商品は「スモーキーさの徹底追求」を国内外でアピール。また、五感で楽しむ蒸留所の実現や、富山の技や素材が調和した空間でのワークショップ体験など、「モノ」から「コト」提供へシフト。蒸留所の垣根を越えてボトラーズ事業を立ち上げ、樽再生事業もスタートしました。

ブランディングの結果、社員のブランド理解度や愛着心がアップし、社員数も大幅に増加。「スモーキーなウイスキーといえば三郎丸」というポジションの確立にも成功し、ウイスキーの売り上げは2019年比で約6倍、輸出額は約8倍、販路は35カ国と拡大。ボトラーズとして10か所以上のパートナーシップを組むなどジャパニーズウイスキー文化の持続可能化に貢献し、高岡銅器など地方伝統産業の再生のきっかけにもなったほか、観光による地域の関係人口の増加にも貢献しました。

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