ブランド・マネージャー認定協会 BRAND MANAGEMENT AWARD

AWARD LIST 20242024年度受賞事例

愛知県 真のエシカルを実践した 小さな肉屋の復活への挑戦

動物の生命を尊重し、持続可能な未来を創るため、非常に手間のかかる少量多品種のモノ作りに徹している小さな肉屋のブランディング事例。牛や豚の生育から関与し、ドイツの事例に倣い、血管以外はすべて一頭まるごと使い切る製法を守り、食材を無駄にせず、自然への感謝を体現しています。人工添加物を使わず、自然素材のみで味を引き出す加工技術は、大量生産とは一線を画し、本物の価値を次世代につなぐ真のエシカルブランドです。

平野 朋子

平野 朋子 合同会社Brand. Communication. Design. エキスパートトレーナー
シニアコンサルタント

ロサンゼルスのスケートボードメーカーでキャリアをスタートし、世界最大のアクションスポーツマーケット「ASR」への出展に携わるなど、グローバルな視点でグラフィックデザインに従事。帰国後、広告代理店で国立新美術館の開館記念ツールやタレントを起用したプロモーションを担当し、通販会社ではダイレクトマーケティングとブランディングを掛け合わせたクリエイティブを手がける。独立後は、新規事業の立ち上げやリブランディング、地方自治体のブランディング支援に従事。思い込みを外し、客観的視点や俯瞰的思考を育み、多様な視点から潜在ニーズを捉えることができるように、住む場所や業種、支援先の土地を限定せず支援活動している。インターナルブランディング支援にも注力し、年間50回以上の研修やワークショップを通じて、延べ1000名以上にブランド戦略を伝えている。

三浦 路夫

三浦 路夫 三浦事ム所 ミドルトレーナー

2003年三浦事ム所設立。朝日新聞社様のイベントポスター、Billboard Classics様のイベントポスター、万作の会様のイベントポスターなど、一流アーティストや伝統芸術のイベント広告を中心にアートディレクション業務に従事。
2015年より経営戦略の風上からクリエイティブに関わる必要性を感じ、ブランディング専門のデザイン会社へ事業転換。
最近の主な仕事には、隈研吾氏が代表理事として代々木競技場の世界遺産登録を推進する、一般社団法人G.Y.S.C.のロゴ、およびブランドデザイン全般を制作。

当日の様子

真のエシカルを実践した 小さな肉屋の復活への挑戦

「真のエシカルを実践した肉屋のブランディング」は、少量多品種のものづくりに徹している小さな肉屋のブランディングです。ブランディングの対象となった肉屋は、1976年に食肉卸・小売事業を開始しました。家畜類を一頭買いしていた創業者が、一頭丸ごと使い切るハムづくりのためにドイツの設備を本格導入したことでハムやソーセージの数々のコンクールで受賞するまでに成長。ただ、2014年から売り上げが右肩下がりになり、ブランディングによる再生に取り組みました。

ブランディングでは、時代に合わない販売手法や顧客の高齢化などの問題点を発見。市場分析を行い、エシカル消費市場の規模は年々拡大していることから、販売方法やコミュニケーション手段を改善することでターゲットが若返り、過去最大の売り上げを取り戻せるのではと仮説を立て、ゴールを「ターゲットをシフトし過去最大の売り上げ3億円を取り戻すこと」と設定しました。

まずコミュニケーション手段は、見込み客と既存顧客で年代やライフスタイルが異なることから、「口コミやチラシ、DM、テレマーケティング、カタログ」から「レビューやSNS、ギフトサイト、楽天、自社EC」に変更。ブランド・アイデンティティは、同店のハムやソーセージが無添加自然素材のみを使い、大量生産とは一線を画した独自の価値を持つことから、「本物の一流肉を、汚すことなく届ける。」と決定しました。ここで言う「本物の一流肉」とは、A5ランクなどのサシが入った高級肉という意味ではなく、健やかに育てられた家畜の肉を指します。また、血管以外の部位も工夫して活用し、手間暇を惜しまず少量多品種のものづくりに取り組むことで、本物の味わいと品質を追求しています。この姿勢が、命への敬意と製品へのこだわりを象徴しています。ロゴマークは、本物を作り続けるマイスターをシンボル化しました。さらにマイスターと看板商品「ポリポリくん」のキャラクターを制作し、そのキャラクターを活用したブランドストーリーも作成。すべての製品、パッケージ、ウェブサイトに展開しました。

ブランディングの結果、売り上げは昨年対比24%増となり、目標の3億円を達成しました。ブランディング前にシニア世代が90%だった顧客属性は、ブランディング後は子育て世代とシニア世代がともに50%に変化。SNSは、Xが10万フォロワー、Instagramが2万フォロワーになるなど多くのフォロワーを獲得。楽天ランキングでは「加工品部門」「ソーセージ部門」「ウインナーソーセージ部門」の3部門で1位を獲得し、高島屋や名鉄百貨店、四つ星ホテルからの引き合いも生まれました。こうした取り組みが高く評価され、2024年度のBRAND MANAGEMENT AWARDでは準大賞と最優秀賞を受賞しました。

2024年度受賞一覧